文化講座
第2回 秋のお菓子 ~ぶどうのゼリーと鬼まんじゅう~
前シリーズでは「日本全国食べ歩き~郷土の味を求めて~」と題し、筆者が全国各地を食べ歩いて研究した郷土の味、その土地の人々から愛されてきた逸品を、作りやすいレシピと共にご紹介しました。
今シリーズでは、お菓子の歴史やその名前の由来、誕生秘話などを取り入れながら、家庭で作りやすいスイーツレシピを毎月2点ずつご紹介します。
第2回目の今月は、「秋のお菓子」ぶどうのゼリーと鬼まんじゅうです。
1.ぶどうのゼリー
旬のぶどう(巨峰)をコンポート(果物をシロップやワインで煮込んだもの)にし、ぶどうの皮で色出しした煮汁をゼラチンで固めたゼリーをご紹介します。
ゼリーとは果汁などの液体に砂糖を加え、ゼラチンで固めたお菓子のことです。
果汁と共に果実を入れて固めることが多く、果汁の他にはワインやコーヒーなどが使われる場合もあります。

伊藤華づ枝作
いちごの白ワインゼリー

伊藤華づ枝作
コーヒーゼリー

伊藤華づ枝作
グレープフルーツのふるふるゼリー
ゼラチンの量を少なくしてゆるく固めると、飲むゼリーになります
ゼリーを応用したお菓子として、牛乳や生クリームを混ぜ込んだババロアやパンナコッタ、ムースがあります。

伊藤華づ枝作
いちごのババロア

伊藤華づ枝作
紅茶のパンナコッタ
ゼリーを固める凝固剤は、動物性のものと果物のペクチンの働きによるものとあり、いずれも熱を加えた後に冷やすと固まる特徴があります。
主な凝固剤(ゲル化剤)として、ゼラチンや寒天などがあります。
<ゼラチン>
豚などの動物の骨や真皮など、コラーゲンを含む物質から抽出する、たんぱく質の一種です。
ぷるるんとした食感が特徴で、とても口どけが良いです。
使用する際に注意する点は、パイナップルやキウイなどたんぱく質分解酵素を持つ果物を生のまま一緒にすると固まらないので、コンポートにするなど加熱してから使用します。
一般的に粉状と板状のものが使われています。

粉ゼラチン
水でふやかしてから使用します

板ゼラチン
氷水にふやかしてから使用します
18世紀頃にフランスの天才製菓職人と呼ばれた、アントナン・カレームがお菓子にゼリーを取り入れたことにより、世に広まったと言われています。
<寒天>
日本で発明された食品で、テングサやオゴノリなどの海藻から作られます。
弾力や粘りは無く、和菓子によく使われる凝固剤で、常温でも固まるのが特徴です。
寒天は酵素に強いので、パイナップルやキウイなどの生のフルーツを入れても固まります。

伊藤華づ枝作
黒糖寒天

伊藤華づ枝作
寒天と白玉フルーツ

粉寒天
水に振り入れて加熱します

棒寒天
よく洗って水につけ、ふやかしてから使用します

※ぶどうの皮の色を活かしたゼリーです
材料(4人分) | 分量 |
巨峰(種なし) | 12粒 |
水 | 500ml |
グラニュー糖 | 大さじ4 |
水 | 大さじ4 |
粉ゼラチン | 2袋(10g) |
レモン汁 | 大さじ1(1/2コ分) |
A | |
マスカルポーネチーズ | 大さじ6 |
グラニュー糖 | 大さじ1・1/2 |
牛乳 | 大さじ2強 |
ミント | 4枝 |
作り方
- 巨峰は粒に分けてから、きれいに洗って皮をむきま
す。 - 皮をお茶パックに入れて実と共に鍋に入れ、分量の水(500ml)とグラニュー糖を加えてゆっくり火にかけます。
- 2.の鍋の巨峰の紫色がきれいに出た時点で、ボウルに漉して実と煮汁に分けます。
- 3.の鍋をサッと洗って煮汁を戻し入れ、分量の水(大さじ4)であらかじめふやかしておいたゼラチンを入れて溶かします。
- 4.のゼラチンが溶けたら火を止め、粗熱を取ってからレモン汁を加えます。
- 器に3.で漉した巨峰の実と5.を入れ、氷水か冷蔵庫で冷やし固めます。
- 混ぜ合わせた(A)を6.の上にかけ、ミントを添えます。
※ぶどうの表面についている白い粉は、農薬と勘違いする人もいますが、これは「ブルーム」と呼ばれるもので、ぶどうが雨や病気から身を守るために作った自然のワックスです。新鮮さの目安でもあるので、安心して皮ごとゼリーにして下さい

伊藤華づ枝作 ぶどうのムース
上記のゼラチンを溶かして粗熱を取った煮汁に(作り方5.)、5分立てにした生クリーム70mlを入れて固めたものの上に、ぶどうのコンポートを飾りました
※ムースとは生クリームを泡立てて空気を入れ、細かい泡を作ってふんわりと仕上げたお菓子のことです
<ブドウの栄養素>
紫色の果皮に含まれるポリフェノールには強い抗酸化作用があり、生活習慣病予防に効果を発揮します。
果肉には体内ですぐにエネルギーになるブドウ糖と果糖を豊富に含み、疲労回復に役立ちます。
2.鬼まんじゅう
鬼まんじゅうとは、薄力粉と砂糖を混ぜ合わせた生地に、皮を厚くむいて角切りにしたさつまいもを加えて蒸した、郷土菓子です。
鬼まんじゅうは愛知県など東海地方で、昔から手軽に楽しむことが出来るおやつとして親しまれてきました。
<名前の由来>
角切りのさつまいもが表面にごつごつと飛び出している様子が、鬼の角や鬼の金棒のように見えることから、「鬼まんじゅう」と呼ばれるようになったとされています。

※皮を厚くむくことが、キレイな色の鬼まんじゅうを作るポイントです
材料(4人分・8コ分) | 分量 |
さつまいも | 400g(正味) |
A | |
砂糖 | 80g |
塩 | 小さじ1/6 |
薄力粉 | 120g |
水 | 大さじ2~3 |
作り方
- 1.さつまいもは1cm厚さに切って皮をむき、1cm角に切って水に晒してアク抜きします。
- 1.の水気を切り、ボウルに入れます。
- 2.に(A)を入れて混ぜます(水は生地が流れない程度に加減して入れます)。
- 蒸し器にクッキングシートを敷いて穴を開け、3.をこんもりと山を作るように8コ並べます。
- 蒸気の上がった蒸し器で、4.のさつまいもが柔らかくなるまで20分間程蒸します。
<さつまいもの栄養素>
いも類の中でもビタミンCの含有量が最も多いのが特徴です。そのビタミンCはでんぷんに包まれているので、加熱しても壊れにくいという長所もあります。
食物繊維が多く、更にさつまいもを切った時に出る白い汁に含まれるヤラピンは便通を促す作用があるため、腸内環境を整えて便秘を予防します。
<名古屋で購入するなら...>

梅花堂の鬼まんじゅう
★梅花堂
名古屋市千種区末盛通1-6-2
名古屋で「鬼まんじゅう」の店と言えば、誰もが「梅花堂」と答えるほどの有名店です。