文化講座
藤の懸美(けんび)
晩春の季、山里の川沿いや海辺に至るあちこちで、美しく懸 け垂れる藤の花を観することができます。

[図版Ⅰ]生花早満奈飛
天保14年(1843)

[図版Ⅱ]
生花早満奈飛
弘化2年(1845)
また、他の藤波の歌の中には「藤波の 思ひもとほり 若草の 思ひ付きにし」とあり、藤の蔓が他の木にぐるぐると巻きつきながら伸びる生命の
このような纏る藤を『枕草子』の「めでたきもの」の段に「色合ひよく、花房長く咲きたる藤の松にかかりたる」と、松を選んで言祝を意して捉えています。
こうした支を得た藤をいけばな古書からも拾い出せ、「藤はことに夜陰をもって
そうした藤もやがては散り、土面を紫や白色に染める時が訪れるのです。次の歌では、
(春日野の藤はすっかり散ってしまった今、いったい何を手折って挿頭にするのだろう)と、端午の節に藤の花飾りをして
そして、これらの歌にから藤の生態の理美に大いに触発を受けながら、藤の
どうか、この春から夏への移ろいの季に、懸け垂れ纏る藤の雅な美しさを観して、豊かな自然の風姿を

